2009/07/30

デンマークの高齢者が世界一幸せなわけ
著者/訳者:澤渡 夏代ブラント
出版社:大月書店( 2009-03 )
定価:¥ 1,785
Amazon価格:¥ 1,785
単行本 ( 212 ページ )
ISBN-10 : 4272360647    ISBN-13 : 9784272360642

みんなの AMAZON REVIEW


 本書は福祉国家として名高い北欧の小国デンマークの、高齢者福祉の現状を現地住民の視点からレポートしたルポタージュです。
 大きな税金を徴収して高い水準の福祉を実現している国を聞いて、国はさぞかし手厚いサービスを提供しているのだろうと思われがちですが、本書第1章で綴られているデンマークの高齢者たちは極めて独立心旺盛です。自分のことは自分でこなす。足りない部分を家族や行政がサポートする程度の、拍子抜けするほど簡素なものです。ただし、サポートが受けられなかったり、日常生活が営めないような状況にはなりません。それらの生活保障サービスに支えられながら、至って穏やかで自然体の暮らしを送っている人々の様を、本書の前半では著者自身の経験を通じて描いています。
 後半ではデンマークの高齢者福祉、その生活保障サービスの実際が紹介されます。普通のアパートのケアスタッフが常駐している介護住宅、自立した生活を支えるためのきめの細かい補助器具、その補助器具の調整をする補助器具センター、自立援助のプロである介護スタッフ、在宅ケアが中心のサービス設計、ケアの判定規準まで、事細かくレポートされ、日本の実態と比較する上で大変優れた資料になっています。加えて、客観的な制度の観察だけでなく、在宅支援、高齢者住宅、介護住宅のサービス利用者の日常を追うことで利用者の視点からも、デンマークのサービスの実態を描き出しており、主観的にも分かるようになっています。これらデンマークの利用者本位の理念の通った福祉の現状と、著者自身が経験した日本での制度ありきで国民の生活実態を2の次にしてしまう福祉の現状との比較がとても対照的で、日本という国のあり方について深く考え込まざるを得ませんでした。
 しかしなぜこの様な国ができたのか。その根本的な疑問にも本書は果敢に挑戦します。民主主義を守るためにたたかった無数の人々、ーナチスドイツに立ち向かったレジスタンスたち、古い価値観とたたかった68年世代などーこの国の民主主義が彼ら国民自らの力で勝ち取られ、守られてきたことが、当事者の発言も交えながら明らかにされます。本書の各所に散りばめられた穏やかで平和な生活の日々を切り取った写真の背後には、この様な揺るぎない信念が一筋通っていたことを知り、日本で暮らす私たちも背筋を正し、私たちは何を求めて生き、何を求めて社会で実現していくのか、真剣に考えなければならないと思いました。デンマークや福祉国家を知ると同時に、日本を知ることのできるまたとない良書です

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