ゆたかとエグモント
デンマーク エグモント教員片岡豊によるWEB日記
2006/11
19
パラダイスか地獄か?
以前、ある人にデンマークの悪い点は何かと聞かれた。デンマークに日常生活しているものからすれば、デンマークは理想の国ではないので、いくらでも悪い点、批判されるべき点は見つかる。では、具体的にはどんなことが批判されるべきことなのだろうか。あまり深く考えずに思いついたままにあげてみよう。
医療・福祉分野
1.専門医の不足(特に癌、心臓病などの)。人口の少ない国。長年の教育が必要とされる専門医(6年間の医学部+6−7年の研修医経験を要する)を必要に応じた数だけ養成するのが容易ではない。また、人口が少ないため、患者数も少なく、一部の専門医はどうしても経験不足になり勝ち。
2.医療・福祉に関しては、デンマークはほぼ完全に公営なので、国全体の予算枠からはじき出される額が決まっているために、経済効率性を重視するマネージメント的な考えが上にいけばいくほどつよい。このことは、第一に、治療・ケアがニーズを絶対的な基準として行われず、経済性という枠の中での優先ということになる。デンマークの医療・福祉はそういう意味でとても「現実的」な政策に基づいて行われている。たとえば「100」しかない額で、心臓患者1人を救命するか、10人の大腿骨手術をするかというようなことが真剣に考えられている。
3.「予防」指向があまり強くない。例えば、まだ喫煙者が多く、平均寿命が低い原因となっている。禁煙政策が積極的に採られるようになったのはここ数年といえる。わがエグモントも、校長夫妻がスパスパすっている。さすがに校内での喫煙はここ1−2年、批判が大きくなり今では禁煙。(しかし事務室・用務員室・IT室・校長室は喫煙まだOK)喫煙者は、寒いときは毛布をかぶって中庭で吸っていたが、50周年記念式に合わせて中庭に屋根付ガラス張りの喫煙室を設けた。「短くとも善い人生を」モットーにしたデンマークライフも、最近は「永くて善い人生」にと変わりつつあるように思える。
4.自己決定権を尊重することから、援助の手がさしのべられるのが、遅くなることもある。とくに精神病と高齢者ケアについてこのことがいえると思う。これは現場で働く人にとっては自己決定権と治療・介助義務という相反した矛盾問題。ここだという線が引けない、そして引かないところが、デンマーク的な倫理といえるかもしれない。
政治・経済分野
5.人口的にも地理的にも小さい国でかつ、ヨーロッパと地続きのため、難民・外国人移民の問題に影響されやすい。ここ数年の一番の政治的関心は、難民の取り扱い。中近東からきたイスラム系の外国人およびその2世(トルコ、パレスチナ、イラン、イラクなど)の増加に伴い、暴力・強盗などの社会的な問題がクローズアップされると同時に、国際的なテロ恐怖も加わって、イスラム系人に対する排除的な傾向がここ数年強い。
特に、難民としての受け入れ審査の期間が長く(時には数年かかる)、その待機期間中の取り扱いが反人道的だと批判が上がっている。以前、エグモントの日本人学生と一緒に、難民キャンプに訪問に行ったことがあるが、ユースホステルのような小さな部屋に家族一家が寝泊りしており、衣食住は確保されているとはいえ、長期滞在するには精神的負担が大きいであろうことは容易に察することができた。
幸い、最近は経済力がどんどん伸び、失業率も低くなり、外国人でも、デンマーク語ができさえすれば、就労することはそれほど問題ではなくなっている。また外国からさらに労働者を受け入れようという傾向が強まってきている。
6.経済発展のために、小国なのに大国なみの外交や軍事行為をしようとするなど、政治的に驕り気味かなと思われる面もある。もっともこれはおもに国内向けの政策であって、あまり気にすることはないのかもしれないが。
7.税金が高いことと。特に自家用車には180%の税金がかかっている。プラス消費税の25%が加わり、新車の購入価格は日本の3倍!!もっともつい最近、政府が行った世論調査によると、国民の大半が現在の税率がちょうどよいという回答。僕に言わせれば、不満なのは税率の高さではなくて、一生懸命長年、働いている僕の給料が、なぜ新卒の長男や、1期のりえこの給料よりひくくて、しかも教員アシスタントのひろより、お小遣いが少ないということだ。それから、僕の給料の10倍や20倍も収入がある人が多くいることにも大いに不満だ。1000万円ほど分けてくれてもよさそうにと思ってしまう。
8.政治的不安定さ。保守派(市場原理派)と「福祉派」(社会民主党と革新派)が約半々なので、小党が大きな影響力を持っている。現在は、超保守派が、天秤の最後の錘になっている。反面、保守派の与党は社会民主党とほぼ同じ福祉政策路線を保持することを表明しており、福祉・医療に関しては、どちらの派もそれほど違いはない。
9.「言論の自由」を縦に言いたい放題するので、感情をうまくコントロールできない人や、言葉でうまく説得する能力のない僕のような人間には、生活が難しく思うときがある。外国人にとってはデンマーク語を習得することが難しいのに、デンマーク語をしゃべれと要求される。言語差別だ。で、僕は何語を話せばよいのか?英語はだめだし、日本語もおぼつかない・・・
社会一般
10.国際的にも問題化されている未成年に対する性行為。これは世界的な現象なのかもしれないけれど、でもデンマークも負けずにある。ここ最近騒がれている事件は、ドイツ国境近くの小さな町で、10歳の娘を、10数人の男性に性行為をさせたということで、父親も、「顧客」も逮捕。市当局が、子供の状況に疑いをもっていたにも関わらずかかわらず、介入しなかったことで、市当局も批判されている。
11.教育心理士をしている連れ合いのインゲに聞いたところ、多くの子供が学校生活を快適に送っていないという。さすがに日本のような極端な「いじめ」はないが、でも最近は「いじめ」問題が頻繁にマスコミで取り上げられるようになっている。また教員や福祉現場の保育市や医療現場の職員たちの間にストレスになる人が多い。・・・たしかにそう。僕も胃潰瘍になったし。日本と比較すると、年間6週間以上の有給休暇その他、もろもろの労働条件などがよいにも関わらず。日常生活での実感としては、毎日がいろいろな課題で一杯。
12.離婚が多い。でも社会的に離婚が認められているという理由で、離婚家族も結構、仲良く育児できる環境にある。家庭内暴力はすくない。親の仲が悪くなればすぐ離れることができるから。ただ難民家族は、一般国民とは異なった問題を抱えている。言葉が出来ない、社会的ネットワークがな、イスラム系は女性は外にでるのが難しい、近親結婚ないし見合い結婚で男が支配的。子供が多く、育児がうまくいかない。国際的にも懐疑の目で見られているために、社会問題を起こしやすい。
13.一般デンマーク人が、経済的に安定し、高い生活水準を送ることができるので、難民家族、社会問題を抱えた家族(アルコール、薬物、麻薬依存症の人々)などの差が目に付きやすすくなってきた。また、東欧諸国の貧困問題のために、北欧に「出稼ぎ」にくる犯罪者がめだつ。そのために治安があまりよくない。警察も手があまりないので、小さな犯罪はよほど数が多くならないと動いてくれない
14.デンマークの若者の自殺率がとても高い。国際比較はしていないが、自殺数は1人だけだったとしても多すぎる。その背景には、一方ではより高い生活水準を求める傾向があり、他方では、多くの若者たちの関心がより精神的心理的問題に向き、例えばうつ病は現代病として、社会的に「認められる」ものとなっている。以前と比べると、宗教とか家族的な共同性があまり重要視されずに、すべて個人の責任で、選択、決定をしなければならない。よって、個人の肩にかかる責任が大きすぎる場合がある。
このほか、まだ沢山あるかもしれないけれど、もう疲れた。このくらいにしておく。
さてデンマークはパラダイスか地獄かどちらだろう?
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